月別アーカイブ: 5月 2015

安倍首相の米議会スピーチを科学的に分析してみた 最終評価

前回は、安倍首相の英語の特徴が顕著に出ていたスピードとイントネーションの分析結果についてお話しました。

今回は、E-CAP による科学的分析結果を元に、パブリックスピーチとして7項目でGPA評価してみました。

平均値は、3.28=B+となりました。項目別解説(チャートの1-7の番号と対応)は、チャートの下をご覧ください。abe-grade2_cr2

1.聞き手の関心を引き付ける

評価:A-

スピーチの冒頭で、祖父である岸信介の演説に言及しながら民主主義を語ったのは、多くの議員の興味をそそったに違いない。

2.聞き手とのつながり

評価:A

前回も申し上げた通り、冒頭で聞き手に馴染みのある人名や地名を挙げて協調姿勢を築くのは、優れた手法のひとつ。

ただ不思議だったのは、オバマ大統領の名前はたった一度しか述べていない。

3.トピックの選択

評価:B+

民主主義、安全保障、経済等と、議会が強い関心を持つホットな話題を網羅し、注意深くスピーチがデザインされていた。

安倍首相の今回の演説のように、聞き手が熱望する話題(日本の第2次世界大戦における日本の役割や韓国従軍慰安婦問題)に全く触れない方法もあるが、デメリットを避けながら、あえてニーズに答え、少し述べる戦術もまた有効だ。

意見は割れるところだろうが、演説後の米国議員やBBCなどの厳しい反応を見ると後者を検討する価値もあったのでは?

4.スピーチの構成

評価:B

外務省のサイトに掲載されたスピーチ原稿によると、12の部分から構成され、ほぼ時系列配置となっている。

全てが大トピックで、それが12もあると詰め込み過ぎという印象は否めない。

5.情報量

評価:C+

冒頭で安倍首相は、

”I have lots of things  to tell you, but I have no intension. ”

(申し上げたいことは山ほどありますが、その意図はありません)

と言っていたにもかかわらず、40分間でカバーするはあまりにも多い情報量だった。

フランス哲学者ヴォルテールの名言

“The surest way to bore an audience is to tell them everything. ”

(聞き手を退屈にさせる最も確実な方法とは、全部を話すことである)

は、パブリックスピーチやプレゼンでは常に適切なアドバイスだ。

6.準備

評価:A

首相が常に練習していたため、昭恵夫人と別室で就寝したというエピソードと原稿に書かれたマークが練習量を物語っている。

abe script

7.熱意は伝わったか

評価:B-

イントネーションは、スピーチのエナジーレベルと切り離せない関係(前回ブログご参照のこと)にある。

読者の皆様のプレゼンなどのご参考になれば幸いです!

広告

安倍首相の米議会スピーチを科学的に分析してみた

prime minister abe

安倍首相の4月29日米連邦上・下院議会で行った演説が、さまざまな議論を呼んでいます。

「見事なスピーチだった!」という言葉と共に、日本人首相としての初めての快挙を讃える一方で、「日本の高校生よりひどい」とか「8割の議員がわからなかったでしょう」といった酷評も飛び出しました。

真実は、いかに?

スピーチの評価はもちろん、2つの側面―「内容」と「伝え方」―によってなされるべきです。

「内容」についてですが、最終原稿はその筋の専門家やコンサルタントによって、慎重に検討されたようです。適切なトピックが選択されたかどうかについては、政策助言を専門とするファーム The Daschle Group に依頼、確認 したことが明らかになっています。

演説の冒頭部分は、聞き手と同調関係を築く試みが見られました。多くの人名を挙げ、また好ましいイメージを抱かせるフレーズ(“shining champions of democracy”)やイディオム(“spent a spell in California,” “I don’t dare ask what Akie says about me”)を巧みに織り交ぜていたからです。

もっとも「内容」の方は専門家チームによる成果ですから、このブログでは「伝え方」に集中して評価しましょう。

主観的評価を避けるため、E-CAP (www.ecap.jp) で評価分析しました。E-CAPは、コミュニケーション能力75項目以上を数学的に正確に評価し、国際プロフェッショナルの基準値と比較する非常に優秀な英語コミュニケーション能力アセスメントです。

最初に申し上げますが、安倍首相の演説の総合スコアはアジア人の平均値より上でした。もちろん通常E-CAPが評価しているのはコミュニケーション力なので、原稿を読んだ場合を評価するとスコアが高くなるのは当然なのでですが、「日本の高校生よりひどい」といった辛らつなコメントに説得力がないのは科学的に明らかです。まあどんな高校生かにもよりますが…。

ご参考のために、いくつかの項目について結果を見てみましょう。

1.スピード

安倍首相の英語演説のスピードは、80.8 単語/1分間で、 国際プロフェッショナルの標準値 (100-200単語/1分間)よりかなり遅いペースでした。この原因は、単語毎に区切って話す途切れがちな話し方にあります。e-cap speed meter

2.イントネーション

言語学研究で証明されているのですが、イントネーションは、自信の表れを如実に示します。それは日本語でも英語でも他の言語でも同じです。トーンの幅が小さいことは、聞き手に不確実な印象や自信のなさを伝えてしまうのです。

abe english speech

左のグラフが、安倍首相の英語イントネーションです。その幅は最大で81Hzですが、演説中にその幅を使用することは稀だったので、平均値はわずか 20Hzとかなり低い値に留まっています。

この数値を、安倍首相の国会演説における日本語イントネーションと比較してみましょう。

japanese speech

安倍首相の日本語イントネーションは、最大102Hzの幅があります。英語に比べると 25%も広く、 イントネーションパターンの多様性も、英語と比べると40%増です。

イントネーションの幅が大きく、多様性に富んでいるということは、スピーチにパワーと権威があることを意味します。

これがそのまま生かされれば、一層素晴らしい英語スピーチが実現できていたはずです。

3.スピードとイントネーション

では、スピードとイントネーションの特徴を視覚化しやすいように波型グラフで見ましょう。

abe waveform

黒の縦線はすべて、安倍首相がスピーチで取った間(ま)を示しています。上の部分に注目すると、黒の縦線2本のあいだにピンクの塊がひとつだけ挟まれているのは、単語で区切ってしまっていることを表しています。

下の部分のネイビーブルーの波線は、安倍首相の英語イントネーションです。幅の広いグリーンの波線が、国際プロフェッショナルの標準値となります。

いかがでしたか。読者の皆様のスピーチに対する印象は、科学的評価と重なっましたでしょうか?

その他単語の特徴などにつきましては、続編をお届けしたいと思います。どうぞご期待ください!